バルツィ

観光・モルドバ

モルドバ共和国の北部に位置するバルツィ(Bălți)は、首都キシナウに次ぐ第二の都市であり、この国の文化、産業、そして教育の中心地として重要な役割を担っています。ドニエストル川の支流であるラウト川のほとりに広がるこの街は、長い歴史と多民族性が織りなす独特の魅力に満ちており、モルドバの知られざる一面を深く知る上で最適な旅先です。

バルツィの歴史と地理

バルツィの歴史は、15世紀の初頭にまで遡ると言われています。オスマン帝国やロシア帝国、そしてソ連の支配下を経験する中で、多文化が混在する街として発展しました。特にソ連時代には、農業機械や食品加工の工場が建設され、急速に工業都市として成長しました。

地理的には、肥沃な黒土が広がるモルドバ北部の中心に位置し、豊かな農業地帯に囲まれています。この地域は、質の高い農作物やワインの産地としても知られています。

バルツィへのアクセス

首都キシナウからのアクセスは比較的容易です。

  • バス: キシナウのバスターミナルから、バルツィ行きの長距離バスが頻繁に運行されています。所要時間は約2時間半から3時間で、料金も安価です。モルドバの田園風景を眺めながらのバスの旅は、この国の素朴な美しさを感じる良い機会となるでしょう。
  • 鉄道: キシナウからバルツィ行きの列車も運行されていますが、バスに比べて本数が少なく、所要時間も長いため、バスを利用する方が一般的です。

バルツィの主な観光スポットと見どころ

バルツィは、派手な観光地ではありませんが、その静かな街並みの中に、訪れる人を惹きつける魅力的なスポットが点在しています。

1. 中心広場と市街地

街の中心にあるのは「独立広場(Piața Independenței)」です。この広場を中心に、行政機関や歴史的な建物が立ち並んでいます。特に、広場に面した「ヴァシレ・アレクサンドリ国立劇場(Teatrul Național Vasile Alecsandri)」は、バルツィの文化的な象徴であり、美しい外観が特徴です。劇場から続く「アレクサンドル・ルソ通り(Strada Alexandru cel Bun)」は、おしゃれなカフェやレストラン、ショップが並び、散策を楽しむのに最適です。

2. 歴史的な教会

バルツィには、東方正教会の美しい教会がいくつかあります。

  • 聖ニコラス大聖堂(Catedrala Sfântul Nicolae): 街で最も重要な教会の一つで、新古典主義様式の白い外観が印象的です。内部は、イコンやフレスコ画で装飾されており、厳粛な雰囲気に満ちています。
  • 聖コンスタンティン・エレーナ教会(Biserica Sfinții Împărați Constantin și Elena): 街で最も古い教会のひとつで、歴史を感じさせる外観が特徴です。

これらの教会を訪れることで、モルドバの深い信仰心と、美しい正教会の建築様式に触れることができます。

3. 博物館と公園

  • バルツィ歴史民族誌博物館(Muzeul de Istorie și Etnografie Bălți): バルツィの歴史や文化、民族衣装、伝統工芸品などが展示されており、この地域の歴史を深く知る上で欠かせない場所です。
  • ヴェニアミン公園(Parcul Veniamin): 街の中心にある広大な公園で、市民の憩いの場となっています。池や散策路があり、のんびりと過ごすことができます。天気の良い日には、ベンチに座って読書をしたり、地元の人々と交流したりするのも良いでしょう。

4. 中央市場(Piața Centrală)

地元の生活を肌で感じたいなら、中央市場は必見です。新鮮な野菜や果物、チーズ、肉、そして手作りのパンなどが所狭しと並んでいます。活気に満ちた市場を歩き、地元の人々と交流しながら買い物をするのは、忘れられない経験となるでしょう。モルドバの伝統的なチーズ「ブリンザ」や、地元の蜂蜜などを試してみるのもおすすめです。

食文化とワイン

バルツィの食文化は、モルドバの伝統料理をベースに、隣国ルーマニアやウクライナ、ロシアの影響を受けています。

  • 伝統料理: トウモロコシの粉を練って作るモルドバの主食「ママリガ」や、キャベツやブドウの葉で肉や米を包んで煮込んだ「サルマーレ」は、ぜひ試しておきたい料理です。
  • ワイン: モルドバは世界有数のワイン生産国であり、バルツィ周辺も例外ではありません。地元産のワインを扱うレストランやカフェで、モルドバワインを堪能することができます。特に、モルドバで栽培される「フェテアスカ」や「ララ・ネアグラ」といった土着品種のワインは、独特の風味がありおすすめです。

多民族都市としてのバルツィ

バルツィは、モルドバ人、ロシア人、ウクライナ人、ロマなど、多様な民族が共存する多文化都市です。街中では、モルドバの公用語であるルーマニア語の他に、ロシア語も広く話されており、ソ連時代の名残を感じさせます。この多文化性は、街の雰囲気や食文化、そして人々の気質にも影響を与え、バルツィをより魅力的な場所にしています。

まとめ

バルツィは、煌びやかな観光地ではありません。しかし、その静かな街並み、美しい教会、そして市場の活気の中には、モルドバの歴史と人々の暮らしが息づいています。

旅の疲れを癒す穏やかな公園、歴史の重みを感じさせる建物、そして温かい人々の笑顔は、訪れる人に忘れられない感動を与えてくれるでしょう。モルドバ北部の中心都市であるバルツィは、この国の豊かな文化と歴史、そして知られざる魅力を発見するための、重要な拠点となるはずです。

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