トリノ:イタリア北西部の芸術と美食の都
イタリア北西部のピエモンテ州の州都トリノは、かつてイタリア王国の首都として栄え、その洗練された都市景観と豊かな歴史、そして美食で訪れる人々を魅了してやみません。アルプス山脈の麓に位置し、ポ川が市街を流れるこの街は、バロック様式の壮麗な建築物、広大な宮殿、そしてチョコレートやワインといった美食の宝庫として知られています。今回は、そんなトリノの魅力を詳細にご紹介します。
トリノの歴史と文化
トリノの歴史は古く、紀元前にはケルト系部族の定住地があり、その後ローマ帝国の植民地となりました。中世にはサヴォイア家の支配下に入り、16世紀にはイタリア王国の首都となるなど、政治的・文化的な中心地として発展しました。この時代の名残は、街の至る所で見られる壮麗な宮殿や教会、そして広場に色濃く残っています。
特に、サヴォイア家の王宮群はユネスコ世界遺産にも登録されており、トリノの歴史的建造物の豊かさを示しています。
サヴォイア王宮群
トリノには、サヴォイア家の歴史を物語る数多くの王宮があります。その中でも、パラッツォ・レアーレ(王宮)は、かつての王の公邸であり、豪華絢爛な内装や芸術作品は必見です。また、パラッツォ・マダマは、元々はローマ時代の城塞であり、後にサヴォイア家の居城となった歴史を持つ建物で、その複合的な建築様式が魅力です。
郊外には、レジア・ディ・ヴェナリア・リアーレのような、ヴェルサイユ宮殿に匹敵する壮大な離宮もあり、広大な庭園とともにその美しさを堪能できます。これらの王宮群を巡ることは、トリノの歴史と権力の中心に触れる貴重な体験となるでしょう。
トリノのエジプト博物館
イタリア国内だけでなく、ヨーロッパでも有数のエジプト美術コレクションを誇るのが、トリノのエジプト博物館(Museo Egizio)です。ここには、膨大な数のミイラ、石棺、彫刻、パピルスなどが展示されており、古代エジプトの歴史や文化、宗教観に深く触れることができます。特に、ラムセス2世の巨大な座像や、ツタンカーメンの時代よりも古いとされる「テベの墓」からの出土品は圧巻です。
トリノの観光スポット
トリノの街は、歩いて散策するのに最適なコンパクトさでありながら、見どころが満載です。洗練された雰囲気と、イタリアらしい活気の両方を併せ持っています。
モーレ・アントネッリアーナと国立映画博物館
トリノのシンボルとも言えるのが、モーレ・アントネッリアーナ(Mole Antonelliana)です。このユニークな形状の建物は、元々はシナゴーグとして建設が始まりましたが、後に国立映画博物館となりました。博物館内では、映画の歴史やイタリア映画の発展について学ぶことができ、最上階からはトリノ市街とアルプスの壮大なパノラマビューを楽しむことができます。ガラス張りのエレベーターで上昇する体験も忘れられません。
トリノ大聖堂と聖骸布
トリノ大聖堂(Duomo di Torino)は、ルネサンス様式の美しい教会であり、カトリック教会の重要な聖遺物であるトリノの聖骸布(Shroud of Turin)が保管されていることで有名です。聖骸布は、キリストが磔刑の後に包まれたとされる布で、その真偽については議論が続いていますが、多くの巡礼者や観光客が訪れる神秘的な場所です。
広場とアルカデ
トリノの街は、美しい広場と、それらを繋ぐアーケード(アルカデ)が特徴的です。ピアッツァ・カステッロ(Piazza Castello)は、王宮やパラッツォ・マダマに囲まれた中心的な広場であり、その格式高さに圧倒されます。また、ピアッツァ・サン・カルロ(Piazza San Carlo)は、「トリノのサロン」とも呼ばれ、両側にそびえる教会やカフェが立ち並ぶ優雅な空間です。
これらの広場やアルカデを散策しながら、ウィンドウショッピングを楽しんだり、カフェで一息ついたりするのも、トリノならではの楽しみ方です。
トリノのグルメ:美食の都の誘惑
ピエモンテ州はイタリアでも有数の美食の産地であり、トリノはその中心地として、豊かで洗練された食文化を誇っています。伝統的な郷土料理から、洗練されたモダンな料理まで、あらゆる食の欲求を満たしてくれるでしょう。
チョコレートの都
トリノは、「チョコレートの都」としても知られています。17世紀にチョコレートがヨーロッパに広まるきっかけとなった街の一つであり、現在でも多くの老舗チョコレート店が軒を連ねています。特に、ジャンドゥイア(Gianduja)という、ヘーゼルナッツとチョコレートを混ぜ合わせたペーストから作られるチョコレートは、トリノの名物です。「ビチェリン(Bicerin)」と呼ばれる、エスプレッソ、チョコレート、クリームを層にした温かい飲み物も、ぜひ試してみてください。歴史あるカフェでいただくビチェリンは格別です。
ピエモンテ料理
ピエモンテ州の料理は、バターやクリーム、そしてヘーゼルナッツなどの素材を巧みに使うのが特徴です。「アニョロッティ(Agnolotti)」という、肉や野菜を詰めた小さなパスタや、「ヴィテッロ・トンナート(Vitello Tonnato)」という、冷たい仔牛のローストをツナソースでいただく料理は、トリノでぜひ味わいたい一品です。また、トリュフの産地としても有名で、秋にはアルバ産の白トリュフをふんだんに使った料理が楽しめます。
ワイン
トリノのあるピエモンテ州は、イタリアを代表するワインの産地でもあります。バローロ(Barolo)やバルバレスコ(Barbaresco)といった、力強く芳醇な赤ワインは世界的に有名です。トリノのレストランでは、これらの地元のワインを豊富に取り揃えており、料理とのペアリングを楽しむことができます。
トリノ周辺情報
トリノ市内だけでなく、その周辺にも魅力的な場所がたくさんあります。日帰りで訪れることができる場所も多く、トリノ滞在をより一層豊かなものにしてくれます。
アスティとランゲ地方
トリノから日帰りで訪れるのに最適なのが、アスティ(Asti)やランゲ(Langa)地方です。アスティは、スパークリングワイン「アスティ・スプマンテ」で有名で、美しい歴史地区を散策できます。ランゲ地方は、なだらかな丘陵地帯にブドウ畑が広がり、ミシュラン星付きレストランやワイナリーが点在する、まさに美食とワインの聖地です。ユネスコ世界遺産にも登録されており、絵画のような景色を眺めながら、ワインテイスティングや美食体験を楽しむことができます。
アルプスのリゾート
冬には、トリノからアクセスしやすいアルプスのリゾート地へ足を延ばすのもおすすめです。セストリエーレ(Sestriere)やモンテ・ゼロニ(Monte Zerone)など、スキーやスノーボードを楽しむことができます。夏には、ハイキングや登山を楽しむことも可能です。
トリノの感想
トリノは、イタリアの他の有名な都市とは一味違う、落ち着いた大人の魅力を秘めた街です。華やかさの中に漂う歴史の重み、そして洗練された美食文化は、訪れる者を深く魅了します。壮麗な建築物、豊かな芸術、そして舌を喜ばせる味覚体験は、トリノを忘れられない旅の目的地にさせてくれるでしょう。特に、チョコレートやワインを心ゆくまで堪能できる点は、食いしん坊にとってはたまらない魅力です。観光客でごった返すことなく、ゆったりと街の雰囲気を味わえるのも、トリノの大きな魅力の一つと言えるでしょう。
まとめ
トリノは、イタリア王国の栄光、バロック様式の壮麗な建築、そして洗練された美食文化が融合した、他に類を見ない魅力を持つ都市です。エジプト博物館の神秘、モーレ・アントネッリアーナからの絶景、そしてチョコレートとワインの甘美な誘惑は、訪れるすべての人々の心に深く刻まれるでしょう。周辺の美しいワイン産地やアルプスの山々へのアクセスも良好で、多様な旅のスタイルに対応できます。イタリアの隠れた宝石、トリノをぜひ一度訪れてみてください。

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